ドレン回収のメリット|捨てていた廃熱を蒸気の省エネに変える仕組みとは

蒸気を使い終えたあとに生じるドレン(復水)には、まだ高温の熱(顕熱)が残っています。ドレン回収とは、この温かいドレンをそのまま排水せず、ボイラーの給水などへ戻して再利用する取り組みです。給水温度が上がる分だけ加熱に使う燃料を減らせるうえ、処理済みの水や排水処理の負担も同時に軽くできます。捨てていた廃熱を燃料の削減に変えられる点が、ドレン回収の中心的なメリットです。効果の大きさは蒸気圧力やドレン量、回収方式によって変わるため、まずは自社の蒸気システムで回収できる熱量を把握することが出発点になります。

この記事の要点

  • 蒸気ドレンには顕熱が残っており、そのまま捨てると熱・水・排水処理の負担を同時に無駄にしてしまいます。
  • ドレンをボイラー給水へ戻して給水温度を上げると、加熱用の燃料を減らせます。回収方式によってフラッシュ蒸気まで活かせる場合もあります。
  • 効果は圧力・ドレン量・配管条件で変わるため、回収できる熱量を試算してから方式を決めるのが確実です。

ドレン回収で廃熱が省エネに変わる仕組み

蒸気は熱を放出して凝縮すると、その温度に応じた高温のドレンになります。飽和圧力が高いほどドレンの温度も高く、まだ多くの顕熱を含んだ状態です。これを冷たい水として捨ててしまうと、せっかく燃料で温めた熱と、水処理を施した水の両方を手放すことになります。

捨てているのは「熱」と「水」の両方

ボイラーはドレンを排水すると、その分だけ冷たい補給水(市水など)を常温から温め直すため、余分な燃料がかかります。高温のドレンを給水へ戻せば給水温度が上がり、蒸気にするまでの加熱量を減らせます。あわせて、補給水量・水処理・排水処理の負担も軽くなります。ドレン回収が「廃熱回収」と「節水」を兼ねる施策と呼ばれるのはこのためです。

回収方式によって活かせる熱量が変わる

回収の方式は大きく、ドレンを大気圧のタンクへ戻す開放式と、圧力を保ったまま戻す密閉(加圧)式に分けられます。開放式は構成が単純ですが、圧力が下がる際に発生するフラッシュ蒸気(再蒸発蒸気)が大気へ抜けやすく、その分の熱を取りこぼしがちです。密閉式はドレンの圧力と温度を保ったまま回収でき、フラッシュ蒸気を低圧用途へ活かす余地も生まれるため、条件が合えば回収できる熱量を大きくできます。どちらが適するかは、回収先までの距離や高低差、背圧、ドレン量などの条件によって変わります。

導入前に押さえておきたい判断基準と注意点

ドレン回収は効果の大きい施策ですが、現場条件を確認せずに配管をつなぐだけでは、狙った効果が出なかったり別のトラブルを招いたりすることがあります。方式選定の前に、いくつかの条件を整理しておくことが大切です。

ドレンが「戻りにくい」条件に注意する

温度調整弁で加熱量を絞る熱交換器などでは、低負荷時に機器内の蒸気圧力が下がり、回収配管の背圧に負けてドレンを押し出せなくなることがあります(ストールと呼ばれる状態)。ドレンが機器内に滞留すると、温度制御が不安定になったり、ウォーターハンマーや腐食の要因になったりすることがあります。こうした条件では、スチームトラップに加えてメカニカルポンプ(ポンピングトラップ)を組み合わせ、ドレンを確実に回収先へ送る構成が有効です。

ここで注意したいのは、メカニカルポンプは電気モーターを使わずにドレンを送り出せますが、まったく動力がいらないわけではない点です。作動には蒸気または圧縮空気を動力(駆動源)として利用します。電源が引けない場所でも設置しやすい一方で、駆動用の流体は消費するため、その分も含めて回収効果を評価するのが実務的です。

まず「回収できる熱量」を試算する

回収効果はドレンの温度・量、回収率、燃料単価などで決まり、現場によって差が出ます。期待値だけで方式を決めるのではなく、実際にどれだけの熱と水を回収できるのかを数値で把握することが出発点になります。省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)に基づく事業者向けの判断基準でも、排熱の回収利用は工場の省エネの基本的な措置の一つとして挙げられています。自社の蒸気システムで回収量とコスト削減額を試算しておくと、投資判断や優先順位づけがしやすくなります。

なお、ドレンが製品や薬品などで汚染される恐れがある系統では、そのままボイラーへ戻せない場合があります。回収の可否は系統ごとに確認することをおすすめします。

よくある質問

Q1. ドレン回収とは何ですか。

A1. 蒸気を使い終えて生じる高温のドレン(復水)を排水せず、ボイラー給水などへ戻して熱と水を再利用する取り組みです。加熱用の燃料と水の使用量を同時に減らせます。

Q2. どのくらい省エネになりますか。

A2. 効果はドレンの温度・量や回収率、燃料単価によって変わるため一概には言えません。目安を知るには、自社の蒸気システムで回収できる熱量とコスト削減額を試算するのが確実です。

Q3. 開放式と密閉式はどちらがよいですか。

A3. 一般に密閉(加圧)式のほうが回収できる熱量は大きくなりますが、回収先までの距離や高低差、背圧などの条件で適否が変わります。条件を整理したうえで選定します。

Q4. ポンピングトラップは動力が不要ですか。

A4. 電気モーターは使いませんが、作動には蒸気または圧縮空気を動力として使います。電源のない場所でも設置しやすい一方、駆動用の流体は消費します。

Q5. ストールとは何ですか。回収に関係しますか。

A5. 低負荷時などに機器内の圧力が回収配管の背圧に負け、ドレンを押し出せなくなる状態です。ドレンが滞留すると温度制御の乱れや腐食の要因になり得るため、ポンプを組み合わせた回収構成で対策します。

Q6. どんな情報があれば検討できますか。

A6. 蒸気の圧力、ドレンの量、回収先までの距離・高低差・背圧、燃料の種類と単価などが目安です。汚染の有無も回収可否の判断に関わります。

まとめ

ドレン回収は、捨てていたドレンの顕熱をボイラー給水へ戻して燃料を減らし、あわせて節水や排水処理の軽減にもつながる省エネ施策です。効果は圧力・ドレン量・回収方式・配管条件で変わり、低負荷時のストールなど戻りにくい条件への対策も含めて構成を考える必要があります。まずは回収できる熱量を試算し、自社に合う方式を見極めることが確実な進め方です。

「回収でどれだけ燃料費が下がるか試算したい」「ストールが起きているか判断できない」「既設のトラップから密閉回収へ切り替えたい」「回収配管の背圧や口径が適正か不安」といったお困りごとがありましたら、ヨシタケの技術相談・選定相談をご利用ください。蒸気圧力やドレン量、回収先の条件をお伺いし、現場に合った回収方式と機器の選び方をご提案します。