新規3記事 受水槽の緊急遮断システムとは|ヨシタケMD-71の仕組みと点検の要点

ヨシタケ MD-71の製品外観
ヨシタケ MD-71(公式製品写真)
ヨシタケ MD-71(公式製品写真)/製品情報・写真出典

受水槽の水を残すために確認したい、緊急遮断システムの仕組み

受水槽の地震対策では、槽本体と出口配管の両方を確認します。槽に水があっても、下流の配管が破損すれば流出するおそれがあります。施設の防災設備を見直すとき、「水槽の容量だけで備えを判断してよいのか」「夜間に誰も操作できなくても弁は閉じるのか」「停電した場合はどうなるのか」と、設備図と点検記録を見比べることがあります。緊急遮断弁の名前だけでは、システム全体の働きは分かりにくいものです。

ヨシタケの緊急遮断システムは、感震器・制御盤・遮断弁を組み合わせて使用します。ここではMD-71・MD-71-NとKS-5型制御盤を例に、地震を感知してから閉弁するまでの仕組み、電源条件、点検、復帰時の確認事項を整理します。導入時だけでなく、既設設備の状態を確認する際の判断材料にもなります。

この記事のポイント

  • 緊急遮断システムは、感震器・制御盤・遮断弁の組み合わせで機能します。
  • 弁の電圧と制御盤の供給電源を区別し、停電時の蓄電池も確認します。
  • 地震後の復帰は、配管などに異常がないことを確認してから行います。

この記事の結論

受水槽の緊急遮断システムは、地震を感知して出口側の弁を閉じ、配管破損による水の流出を防ぐための設備です。MD-71・MD-71-Nは制御盤と組み合わせて使うため、弁だけでなく、感知・電源・制御・保守まで一つの仕組みとして確認します。停電への備えには蓄電池の維持が必要で、閉弁後も設備確認なしに通水を再開することはできません。既設設備では型式と点検記録をそろえ、新設では守りたい水槽と配管系統を整理して検討してください。

水槽の容量と、流出を防ぐ働きは別です

受水槽や高置水槽に水をためていても、出口につながる配管が開いたまま破損すると、水が外へ流れ出す場合があります。緊急遮断システムは、地震を検出したときに配管の弁を閉じることで、槽内の水を残すことを目的に使われます。

ただし、水槽本体の破損を補修する機能ではありません。水槽、支持構造、配管の耐震対策と、出口を閉じる機能は別の対策です。また、槽に残せた水量と、施設内で実際に利用できる水量も同じとは限りません。取水方法や使用先まで含めて設備計画を考えます。

比較のための仮定として、容量10m³の水槽を考えると、容量の単位換算は10,000Lです。しかし、常に10,000Lが入っているとは限らず、地震発生時の水位や流出状況によって残量は変わります。容量の表示を、そのまま非常時に確保できる量として扱わないことが大切です。

手動の止弁と比較するとき

手動の止弁は、人が状況を確認して閉じます。仕組みは分かりやすい一方、現場へ到達するまでの時間や操作できる人の有無に左右されます。緊急遮断システムは、設定された条件を感震器が検出し、制御盤から弁を閉じる指令を出します。

自動化した場合も、設置後の点検が不要になるわけではありません。電源、配線、蓄電池、弁の動作などが適切な状態にあることが前提です。手動操作のしやすさと、自動で作動する設備の維持条件を両方確認して、施設の管理体制に組み込みます。

地震の感知から閉弁までの流れ

構成機器 役割 確認すること
感震器 設定された揺れを検出する 設定条件と取付状態
KS-5型制御盤 感震器の作動を受け、遮断弁へ指令を出す 供給電源、制御台数、蓄電池
MD-71・MD-71-N 指令により弁を閉じる 呼び径、適用流体、配管条件

KS-5型制御盤の標準仕様では、感震器の設定加速度は200ガルで、メーカーは震度5強相当と説明しています。気象情報で発表される地域の震度だけから、個別の設置場所で必ず同じ動作になると判断することは避けます。機器は、その場所で受ける揺れと設定条件に基づいて作動します。

感震器が地震を検出すると、遮断弁は閉じる方向に動作します。通常の供給圧力を調整する減圧弁とは目的が異なり、必要なときに流路を遮断する機器です。また、標準構成は地震を検知するものであり、配管の漏水量を直接測ってすべての漏水を検出する仕組みとは区別します。

構成と作動の出典:MD-71取扱説明書「2.仕様」「5.作動説明」。

MD-71とMD-71-Nの基本仕様

項目 仕様の概要
用途 受水槽・高置水槽用緊急遮断弁
形式 バタフライ弁
呼び径 50A~200A
適用流体 水道水
適用圧力 0~1.0MPa
適用温度 5~60℃
接続 ウェハー形、JIS 10Kフランジ対応
弁の定格電圧 DC24V

MD-71-Nは水道法基準適合品です。設備の仕様書で適合品が必要な場合は、末尾の「-N」まで含めて型式を確認します。外形が似ていることを理由に、同じ仕様と扱わないようにします。詳細はMD-71-N公式製品ページで確認できます。

ウェハー形は、両側の配管フランジの間に弁を挟んで取り付ける接続形式です。既設設備への設置では、配管の呼び径だけでなく、フランジ規格や取付スペースを確認します。操作部の位置と保守作業ができる空間も、配置図に含めます。

適用流体は水道水です。油や薬液、蒸気などへの使用を、呼び径や材質の情報だけから判断してはいけません。用途が異なる場合は、対象流体と使用条件を伝え、対応する製品について確認します。

電源と蓄電池をセットで確認する

弁と制御盤では電圧の記載が異なります

遮断弁の定格電圧はDC24Vですが、KS-5型制御盤への供給電源はAC85~240V、50/60Hzです。仕様書には二つの電圧が登場するため、「DC24Vの弁だから施設側もDC24Vを用意する」と単純に読み替えないようにします。制御盤を含む接続構成で確認する必要があります。

取扱説明書では、制御盤への常時通電を求めています。普段使わない設備だからと電源を切っておく扱いは、停電時の作動に影響するおそれがあります。電源の供給元、管理するブレーカー、停電時の確認方法を設備台帳に記録しておくと、担当者交代時にも状況を把握しやすくなります。

バックアップ時間は無期限ではありません

KS-5型制御盤のバックアップ時間は、仕様上約5時間です。これは停電後も無期限に作動できるという意味ではありません。蓄電池の状態や使用環境を含めて、実際の設備の仕様と保守状況を確認します。

ヨシタケの公式Q&Aでは、蓄電池を3年ごとに交換するよう案内しています。地震で弁が作動していなくても、蓄電池は消耗品です。「一度も使っていないから交換不要」という判断を避け、交換年月と次回時期を記録します。

確認例として、設備台帳には制御盤の型式、設置年月、直近の蓄電池交換年月、次回交換時期、点検担当を同じ欄にまとめます。新しく担当した人が、盤の表示と記録を照合できる状態にしておくことが重要です。交換作業そのものは、電源の遮断を含む取扱説明書の手順に従って実施します。

電源・蓄電池・制御台数については、ヨシタケ「緊急遮断システム」の公式Q&Aも参照できます。

制御台数と周辺機器を確認する

KS-5型制御盤の標準仕様は、遮断弁2台の制御です。公式資料では、1台、3台、4台を制御する仕様も案内されています。水槽の出口が複数ある場合には、出口の数と閉じたい系統を整理し、制御盤が必要な台数に対応しているか確認します。

弁を閉じることで、接続先のポンプや設備へどのような影響があるかも検討事項です。取扱説明書にはポンプ保護用の出力などが示されていますが、必要な連動は施設の構成によって異なります。接点があることだけで既設設備へそのまま接続できるとは判断せず、設備担当者と電気・制御の条件を確認します。

また、弁と制御盤では保護構造が同じとは限りません。取扱説明書では、弁の電動操作部とKS-5型制御盤それぞれの条件が示されています。設置場所の雨水、結露、周囲温度などを整理し、機器ごとの条件と照合します。屋外に置けるという説明を、浸水しても使用できるという意味に広げないようにします。

地震後は、配管の確認を先に行う

地震で遮断弁が閉じた後は、設備や配管に異常がないことを確認してから復帰操作を行います。揺れが収まったことと、配管が健全であることは同じではありません。破損箇所が残るまま開けば、せっかく残った水が流出するおそれがあります。

取扱説明書では、異常がないことを確認した後に遮断弁開スイッチを操作し、感震器をリセットして弁を開く手順が示されています。「自動復帰」という表現だけを見て、地震後に確認なしで勝手に通水を再開する装置と捉えないことが大切です。

施設側では、点検担当、復帰を判断する担当、通水後の確認担当を決めておくと、作業の抜けを減らせます。停電や立入制限がある場合も含め、実際の管理体制で実行できる手順にします。製品の操作方法と、施設全体の復旧判断は組み合わせて運用するものです。

管理担当者が確認したい7つの疑問

Q1.MD-71だけ取り付ければ、地震で自動的に閉じますか?

A1.制御盤と組み合わせて使用します。感震器・制御盤・弁を含む構成で確認してください。

Q2.標準ではどの程度の揺れで作動しますか?

A2.KS-5型は200ガル設定で、メーカーは震度5強相当としています。実機の仕様を確認します。

Q3.電源がなくても使えるシステムですか?

A3.電源が必要です。制御盤はAC85~240V、50/60Hzで、停電時には蓄電池を使用します。

Q4.停電時には何時間でも使えますか?

A4.無期限ではありません。KS-5型の仕様ではバックアップ時間は約5時間です。

Q5.蓄電池は地震で作動した後だけ交換しますか?

A5.作動の有無にかかわらず消耗品です。公式案内では3年ごとの交換が必要です。

Q6.1台の制御盤で複数の弁を動かせますか?

A6.標準は2台制御です。1台・3台・4台の仕様も案内されているため、必要台数を伝えて確認します。

Q7.地震が収まれば、すぐ復帰させてよいですか?

A7.配管などに異常がないことを先に確認します。その後、取扱説明書と施設の手順に従って復帰します。

型式と点検記録をそろえて見直す

  • 水槽と出口配管の位置関係、閉じる必要がある系統を確認します。
  • 弁・制御盤・電源・蓄電池を一組として管理します。
  • 地震後の点検と復帰手順を、施設の担当者間で共有します。

既設設備では、まず型式と蓄電池交換記録を確認してください。新設・更新の検討では、水槽の図面、配管口径、制御台数、電源条件をそろえ、ヨシタケのお問い合わせ窓口へご相談ください。